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ラスト・トレイン -脱出劇-

2010/09/23 (木) 23:33:42
誰もいない駅のホームで、私はただつったっていた。
上を見れば灰色の屋根と空、下を見ればコンクリートのロータリー。
その先に見える荒野には裸の木が数本立っていて、それが冷たい風に揺られてカサカサと音を立てている。
灰色一色で統一された殺風景な色彩の中で唯一、年季を感じさせるくすんだ黄色のベンチが色の面白さを語っている。
別にここで立ち尽くしているからと言って、何かが訪れてくれるのを期待しているわけではない。
どれぐらいこうやって過ごしているのか、どうやら自身でも計り知れないくらいに時間は流れているようだ。
ただ、今までに電車は何本も訪れ、停車してはまた発進していったようにも思える。
私は何に期待して、こんな所にいるのだろうか。
どうやら、袋小路に迷ってしまったみたいなんだ、思った先に口からその言葉が出ていた。
風が荒野から乾いた砂を運びだして、それが私の目に襲いかかる。
私は目をこすりながら、厳しい場所だなと思った。
自分は現在、出ることの出来ない箱の中に居るのかも知れない。
箱には半分ぐらい水が入っていて、そしてその中に私は閉じ込められている。
何をやっても出れないし、つまらないから潜水して遊んでいるのだけれど。
そろそろ息が持たなくなってきたかな、もう上がろうかな、なんて考えてるような、多分そんな気分と同じだ。
そう思うといっそうこの場所はつまらないもので形作られているように見えてくる。
もしかするとだが、これは……。
そう、私が欲しいものは、新しい世界とかいうやつだろうか。
この息の詰まるような感覚から脱出するための手段としては、なかなか適切だし、色々な人がそのためにいろいろな場所に向かっているのだろう。
それと同様に、新天地に胸を馳せてそこへ向う電車を待っている、それが私だろうか?
………いや、違う。
そうじゃないだろう。
別に飽きたわけじゃない。飽きるどころか、現状に甘んじたいぐらい満足している。
いや、ここにいるのはつまらない事なのだが、私の居場所に帰ればそれはもう愉快な気分になれることうけ合いだ。
しかし何故だろうか。後ろを見てみると、その素晴らしいと思った世界は、なんだか霞んで見えた。
まるで蜃気楼のようだ。
そこへ足を踏み入れようとしたら、そのままどこかへ落っこちていってしまいそうな、そんな偽りの景色だ。
戻れそうもないな、私はなんとなくだけれど、しかし確かな感覚としての手応えを感じていた。
それでも、満足しすぎて死んでしまいたくなるほどにこの世界はよくしてくれている。
それ自体に恩を感じたことはない。
ただ、良くしてもらっている、この世界というゆりかごの中で、私達が笑いあえているだけだ。
その現実が素晴らしくて、まるで夢のなかの世界のようで、その中の1パーツとしてあれる事に、感謝している。
たぶん、私はそこから出て行きたいとは思ってない。
きっと、出て行きたくない。
はやくあの場所へ帰りたい。自転車に乗って、さっさと帰えってしまいたい。
それがダメなら、歩いてでも帰りたい。

「そうか………」

言葉が口から漏れた。白い息がふわっと口元に浮かんだ。

私は出て行きたくなかったのか。
コメント返信
たい焼き王子様
頑張ります。
あなたのブログも、読みたいです。
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